2007年9月22日 (土)

詩篇 無題

 

無題

 

おれの体の中から虫がはいずり出てくる

へそのまわりや腋の下股座の辺り

毛穴の一つ一つを掘り返すように

ぞこぞこジュワジュワ

赤い虫ども黒い虫どもこげ茶の虫ども

百足糞虫油虫

蛆虫毒虫ミミズゴンゾリ

腹をすかせた臭い臭い虫の塊が

おれのからだを這いずり回り

おれのからだに食いつき始める

この虫はおれの体から出たのだから

おれ自身のもの 

いやいや誰のものかなどどうでもいい

食い尽くせ おれのすべてを

かつて 中国朝鮮フィリピンやグァム

アジア太平洋のそこらじゅうを食い尽くした日本軍隊のように

食い尽くしてこの虫どもはどうなる?

他人に踏みにじられて死ぬのか

結局飢えて土に還るのか

ゴンゾリよ蛆虫よ油虫よ

おれから生まれて死ぬ虫けらどもよ

いつまでも生きろ

おれのかわりに生き続けろ

 

 

 

 

 

 

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2007年1月21日 (日)

詩篇 夜行

夜 行 三篇

 

 

 

雨傘について話す

アンブレラという名前の人・・・

不思議な眼をしたあなたの横顔が

ガラス越しに遠く

夕景の街を眺めている

薄闇に降り泥む沛雨の

灰白色の微粒子が

物言わぬ人々の影を覆い

何気ない一日の終わりを

見知らぬ旅先のようにガラス窓に映し出す

どのように美しい人を見ても

ごつごつとした現実にしか見えない

真新しい幻影を迎え入れるため

あらゆる幻想を振り払おうするが

もう一人の私が

私の中からすぐに走り出て見えなくなる

なぜ私はこうも愚かであり

恥ずべくも生きる術を持たないのか

アンブレラ

傘を下さい

暖かな名の人よ

歩道を逃げ去るその男にも

・・・・

 

 

逆向きの虹が夜にかかる

冬の冬のみを信ずる

死の党派 あの黒い鉄の虹に

密集する零下の残余

余儀ない推移の密証から

滴り落ちた血筋たちの杜絶 

きれぎれの流説の合間すら

明日には凝り固めた沈黙の意味を

遥かに遠く支えきれない

死までの信憑の彼方から行く

生からの帰還の痕跡を敷き詰めた黒い虹の後ろから

圧制への親しげな幻影と

困窮への疾しくも激しい憧憬を

体内に生え出た手足のような言葉の肢体が

むしろ体内に延びる私自身の死体が

呼び求めはするだろう

 

 

僕らはもう助からない

灰色の猛々しい毛根を地上に垂らした空

動くことのない黒白の扉の前で

もう二度と歩き出すことはない

大気を埋め渡す膨大な雪粒の中に

この骨を焼ききるほどの焦熱を見つけるための

死への希望はついに始ることがなかった

今は生き延びねばならない

ついに始ることのない

歴史の穴を覗く者は

一人一人その虚無に落下し

歴史の果実になる 

歴史の圧電に

黒々と焼け爛れた鋼鉄の果実

その虚無を耐えて

世界の無意味に購って

生き延びねばならない

僕らはもう二度と

死ぬことができないから

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